今月の音声心理士#5:津田久美子さん
聞き手・本文/北村昌陽(フリーランスライター)
2026.08.01
――声診断と出会ったきっかけを、教えてください。
津田久美子さん(以下、津田)もう3年ぐらい前になります。
私、その頃、転職しようと思っていたんですよ。自分ががんになって大きな手術を受けたのと、職場の人間関係とかが本当にいろいろ大変で。
それで、精神的にも肉体的にもいっぱいいっぱいで、もう、新しい仕事を探そう、と思い始めていたんです。
――ほう。何の仕事をされていたんですか?
津田教師です。特別支援学校といって、知的障がいなどをもつ子どもたちの学校で、30年ぐらい教員をやってきました。
自分で言うのも何ですけれど、私はもともと、他の先生方にとっては大変な子どもたちとも、割とこう、楽しくうまく接するのが得意でして(笑)。
だから、もうどんな子が来ても私が面倒見たるわ、ドンとこい!って感じで、妙な自信もあって、ずっとイケイケでやってきたんです。
ところが、5年ほど前から、うまくいかなくなった。
その頃の職場は、いろいろ問題を抱えていて、休職する先生が何人もいました。それで、私が何とかせないかん、と思って、上司にあれこれ提案したりもしていました。
ですが、なかなか状況は変わらず。
さらに、自分の病気とか、いろいろとショックな出来事も重なって、私、もう教師辞めようかな、みたいな気持ちが湧いてきたんです。
それでも、辞めて何する?って考えたら…。
やっぱり、子どもたちを支援したい、という想いが強かった。
それで、何か役に立ちそうな資格を取りたいと思って色々探していたら、「声診断」に辿り着きました。何これ?面白そうじゃん、って。
そこから、中島由美子先生のワンデーセミナーに参加したんですよ。
――由美子先生のお話を初めて聞いたときの印象は、どうでした?
津田いやー、もう声がとっても素敵で、可愛い、って思いました。
それに、フルサウンドボイスっていう言葉も、すごい魅力的で。
この先生についていったら自分の声がフルサウンドボイスになるの?って思ったら、あー、もう、私、これでいく!ってビビッときた(笑)。
よし、教師辞めて音声心理士になろう、じゃ、その前にまずVRP(Voice Revolution Program)に参加して音声心理学を学ぶのね、よーし!って、もう即決でしたね。
――すごい行動力ですね。
津田いやもう、我ながら単純で(笑)。
あと、声診断は、現場の先生方のサポートに役立つと思ったんですよ。
そのころ、職場では病休者が何人も出ていて、私は周りの先生たちから、連日、いろんな相談を受けていました。
それで、毎晩8時までは、同僚の先生たちからの相談対応って決めてたんです。それから家に帰ってご飯とお風呂。そして10時から自分の仕事。
そんな生活をずーっと続けていた。
そうしたら、自分が体を壊してしまった。がんだけじゃなく、糖尿病もやってるんです。三大成人病のうち二つをクリア(苦笑)。
もう、こんなことをやっていても、らちがあかんわ、と。
自分はもう教師を辞めるつもりでしたから、辞めてから現場をどうサポートする?って考えたとき、まず先生方を元気にしたい、って思った。そこに、声診断がスポンとハマる気がしたんです。
それでとにかく、2023年の10月から、VRPファーストに参加しました。
「内面と向き合う」って、どういうこと?
――VRPを受けてみて、いかがでした?
津田うーん…。
ホントに正直にいうと、何やってるのか、さっぱりわかりませんでした(苦笑)。
講座を聞いて、言われるがままに、自分の人生をいろいろ振り返ってSNSに投稿する。まあ、その通りやっていましたけれど。
特にそれで、何の深まりもない、というか。
いろいろヘビーなことを経験してきた人生だったので、投稿するネタはボンボンありましたよ。
だけど、これをやってたらフルサウンドになるの?いやぁ、ならんじゃろ、みたいな、そんな感じでしたね。
――ほぉー。
津田要は、自分としては、早く声診断をやりたかったんだと思います。いつになったら私はセッションできるようになるんだ?って。
音声心理士の資格を取る上で、その基になるロジックがあるなら、まずそっちを受けよう、って思ってVRPに参加していたので。
だから、いま思えば、自分の内面と向き合うということが、さっぱりわかっていなかった。
――なるほど。
津田それと、もともとの予定では、私、翌年の4月で教師を辞めるつもりでした。実際、年末には退職届も出していました。
だけど、1月に、辞めるのをやめたんです。
――えっ?それは、何があったんですか?
津田いや、なんか、イケイケの勢いでここまできたけれど、本当にやっていけるの?っていう思いは、ずーっと頭の片隅にあって。
それで、2024年の年明けすぐに、能登で大きな地震がありましたよね。
――はい。
津田あのニュースを見たら、急に怖くなってしまって。
私はシングルマザーで、子供が2人いるんです。当時、高校生と大学生。
今は公務員という立場だから、収入も家も保証されているけれど、やめたらこれが一気に無くなるんだな、って。そういう現実が急に見えたら、一気に怖さが出てきた。
それで、上司のところに行って、すみません、辞めるのをやめたいんです、って申し出たら、取り下げがギリギリ間に合いまして。
代わりに転勤希望ということにしてもらって、4月から別の特別支援学校へ転勤になりました。
――何とまあ。急転直下ですね。
津田いやぁ、激しすぎですよね。
2008年秋。ひとり親になったばかりの頃。
2026年のお正月。
津田振り返ってみると、私の人生って、いつもこんな感じなんですよ。
何か大変なことが起きて、なんとかせんといかんって言って、その都度、バタバタと場当たり的に対応する。
あの人が大変だ、助けなきゃ、先生たちが病気になってる、なんとかしなきゃ、地震が危ない、備えなきゃ、と。
外で起きたことによって、自分が動かされてる、っていう感じ。
シングルマザーになったときも、そんな感じでした。きっかけは、元夫のDVです。私に暴力を振るっていた元夫を見て、当時6歳の息子がね、私を守ろうとして、飛びかかったんです。
そしたら、バーンって叩き飛ばされた。
それまでは私にだけだったけれど、このとき初めて、元夫は息子に手を出した。
それを見て、私、この子たちだけはもう何としても守らないかん、って思ったんです。
だから、警察と弁護士のお世話になって、逃げた。
――はい。
津田…というこの出来事も、夫が危ない、逃げなきゃ、っていう、結局、同じパターンですよね。
自分はどこまでも、外側の出来事に反応して動くことしかやってない。
――ああ。なるほど。
津田人間関係で言えば、人の要求とか、顔色を見て、自分は何を求められているの?何が正解なの?って。
そういうところにしか、アンテナが立っていない。そんな感じ。
「私は何をしたいの?」という問いかけが、できなかった
津田自分がそんなふうに、外側ばかり見て振る舞っていた、と気づいたのは、ホントに、ごく最近のことなんです。
VRP初参加のあと、音声心理士の講座にも参加して、2025年の3月に、念願の心理士資格をいただきました。
それでようやく、声診断セッションを始めた。私は公務員なので、全部、無償のボランティアでやってるんですが。
セッションをするときは、動画で記録しておくといいって、講座の中で教わりますよね。後で見返して勉強できるように。
――はい、そうですね。
津田でも私は、どうしたわけか、この「録画する」ができなくて。
――ほう?
津田いや、もし自分がセッションを受ける側で、録画されていたら、ちゃんと秘密が守られるのか心配で、言いたいことを言わんどこ、って思う気がして。
――へー。
津田だから、自分がセッションするときに「録画します」って切り出せない。そこを曖昧にしたままやってたんです。
でも、今年に入ってから、先輩の心理士さんが開いてくれた勉強会に参加したら、その心理士さんが、自分のセッション動画をみんなに公開して、そこにみんなが意見し合うっていうスタイルでやっていた。
これ、すごいな、と。
みんなこうやって、自分のことをしっかり見直してるから、深いセッションができるようになるんだ、と。
それで、私、このままじゃいかんって思って、その先輩にお願いして、声診断をやってもらったんです。「どうして私は、セッション動画を録画できないのか。どんなブロックがあるか知りたい」ってテーマで。
――おおっ、なるほど。
津田そうしたら、「本当の自分を見たくないから」っていう答えが出てきて。
ああー、そこかぁ、って思った。
私が育った家は、「けなし文化」だったんですよ。
――けなし文化?
津田そう。男尊女卑が色濃く残る土地柄の上に、「女のくせに」「子供のくせに」と、ことあるごとにけなされる。
私はそれに反抗して、くっそーって思って頑張ったり、どうせ無駄って思ってやさぐれたりしてたけど。
要するに、相手の顔を見て反応するばっかりで。
自分が何をしたいかなんて、考えたこともなかった。
――ああ。
津田こうしたい、とか言ったところで、どうせ聞いてもらえないし。
だったら、自分の気持ちなんか、見たくない。知りたくない。知らない方が、生きやすい。
ただただ、表面的な現実だけ見て、そこに対応する。
そういう思考パターンが、すっかり染み付いていたんです。
これが、録画ブロックの正体だった。
秘密が守られるか、なんて後付けの言い訳。私の本音は、自分を見たくなかったんですよ。
そういうことが、このセッションで、ようやくわかってきて。
あー、だから私は自分のこと、何も見てこなかったのか。どうしたい?って、自分の気持ちを自分で聞くことも、してこなかったのか、って思ったら…。
ブワーって、泣けてきた。
それで…、もう、いまから人生やり直し、生まれ直し、みたいに思いました。
――いやぁ、本当に大事なところに気づけて、よかったですね。
津田はい、ほんとに、今からがスタートです。
職場の畑にて。ジャージが私のユニフォームです。
――これからが本当に楽しみですね。
津田さんはこれから、どんな音声心理士になりたいですか。
津田そうですね、私はやっぱり、30年間、子どもたちにお世話になってきたと思っているんです。
お世話というか…。鍛えられた、って感じかな。
子どもたちのお陰で、生かされてきた。
だから、これからは、恩返しをしていきたいです。そんな気持ちです。
――ありがとうございました。




